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[ボクに彼氏が出来るまで](7)
▽前回まで▽
★この更新はボクに彼氏ができるまでを振り返る、自叙伝です。
★書籍化を目指していますが、とくに今まで通り読んでもらえるとうれしいです。
★感想は、気軽にコメント欄にかいてね。
★書籍化目指してます。興味のある出版関係の方、いらっしゃいましたら
─(7)─
学童保育までの道のりは、学校から直線距離で大げさに言っても500メートルは無い。
いつもなら数分で到着するところをいつの間にか、早足、競歩、軽くランニング、といった具合に足取りが速くなり、歩道を歩く子らを、1人、また1人と追い抜いていく。別に何かを我慢しているわけではなく、今日、林間合宿の命運を決める、班分けがあるから焦る気持ちを隠しきれなかった。
“早く行って、健と同じ班になりたい。”
ライバルを1人、また1人と追い抜きながら一直線にボクは、走り出していた。
いつもなら自治会館の前には、低学年の子らが遊んでいるけど今日は、その姿は無く、ボクが一番乗りか、と思えるほど階段を1段飛ばしで駆け上がった。
ガチャ。
ドアを開けると、先生と低学年の生徒らがおやつの支度をしていた。周りを見渡すも、健の姿や男子の姿は無く、どうもボクが男子の中では一番乗りなのかな、と思ったその時、後ろから、
「班分けだったらくじ引きだってよ」
1つ下の大柄少年だ。その後ろには、しっかりと健の姿も。さらに、その後ろからズラズラと男子が入ってきた。
健は、小さな声でボクに、「なんかドキドキするね」 と無邪気な笑顔で言うとおやつの載ったテーブルのほうに歩いて行った。ドキドキしているのは、ボクのほう。なんでくじ引きなんだ、という戸惑いと、健を追いかける視線の先に必ず入ってくる大柄少年に、嫉妬していた。
先生からも、「健ちゃん大人気のため、部屋割は、くじ引きにしまーす」 といつも以上の大声でアナウンスが流れた。女子にも男子にも人気のある健の取り合い。
といっても一応、「男子」と「女子」は完全に分けるため、女子は、ライバルではない。ボクにとって一番のライバルは、大柄少年ただ一人だ。あいつにだけは、健をとられたくなかった。
男子の部屋は3つだから班分けも3班になる。意外と学童保育は、児童が多いなって思った。確率は、3分の1。高いようで低いその確率に賭けるしか無かった。
肝心の健自身は、だれと同じ班になりたいんだろう。そんな思いもあったけど、怖くて聞くことはできなかった。くじ引きの方法は、「1」「2」「3」と数字の書かれた紙を折りたたみ、混ぜて、どれか選んで出た数字の班になるという、最も簡単で、最も準備に力のいらない単純なくじ引きだ。
健は、絶対に渡さない! 変な強い意地と思いこみで、突っ走っていくボクと、
自分が原因でくじ引きになっている、という自覚がない健、
なぜか健に固執して、ボクに当ってくる大柄少年、
単に楽しんでいる先生、
いろんな思惑が絡みあい、そのくじ引きをボクは引いた。
・・・。
数字は、「2」
ボクの後に何人かの男子が引いたが、結果にあまり興味はなかった。
そして大柄少年がクジを引いた。結果は、ボクと同じ「2」、ボクにとっては最良の結果だった。
これで、健が「2」以外だったとしても、大柄少年と健が同じ部屋になることは無いのだから。
そして健がクジを引いた。
結果は、「2」
神様は、何を望んでいるんだろう。紙の悪戯なのか、神の遊び心なのか、
結果は、ボクも大柄少年も、そして健も、同じ部屋と決定した。
嬉しい半面、さっきは最良の結果とした嫌な奴と同じ数字も、健も一緒の部屋ということから複雑な思いに変わっていた。健のほうを向くも、健の視線はボクとは違う方向に向いていたけど、このときは、その意味を深く知ろうとはしなかった。
なんとも長い時間が過ぎたように思えたけど、ほんの数分の出来事と知ると、また驚いた。
この日のおやつの味は、とっても、苦かった。
<<続く>>